尿管結石来襲

夜中の3時。左腰の違和感で目が覚めた。
痛みというより、なんとなく重い。
天井を見上げながら数十秒・・・、
「もしや・・、来た来襲じゃ、迫ってるに違いない。」

迷うことはなく、私は階下へ降り、素早く靴下をはき、パジャマを脱ぎ捨て、
ボストンバックに着替えを詰め、戦闘対戦に入った。
洋服はあらゆる状況を考え、動き易く、かつこざっぱりとした、アディダスのジャージを選択。

ボストンバックを片手に玄関にひざまずき、敵の動向を伺う。
腕時計をみると3時10分、
静かな玄関で腕時計の秒針が刻まれているのをじっと見ていた・・・、

「来る・・・、いや、来た・・・た、た、・・・ぬおーっ!!!やっぱ来おあった~~!!ま~ちがいない!」
確信から激痛まではあっと言うまであった。
ただならぬ玄関の様子に妻が起きてきた。
「もしかして・・・、また? 」
「そう~、みたい~、ってて、う~」
・ ・・・・・
「わかった!すぐ車回すわ」
そこからの妻は早かった。
火事を得た消防士、いや水を得た魚・・・、どちらも微妙な表現だがそんな感じ。
アドレナリンが感じられる。
「急いで! 行くわよ」
キーを片手に妻は車へと飛び出た。
玄関には私と、ボストンバックが取り残されている。
私は・・・、バックは・・・

尿管結石の来襲である。
敵は我が尿管の中で停滞し、尿を堰き止めておる。


私はボストンバックを握りしめ、玄関の階段をカニのように下りていった。
「医大でなくていい。とりあえずO病院へ行こう。そこで朝まで痛み止めでしのぎ、朝九時になったらOO泌尿器科病院へ行き、超音波で砕いてもらうから。」
「そうなの、わかった!O病院ね。前に医大に連れて行くとき、車が揺れたら痛がってたけど、やっぱ揺れたら痛いの?」
「いや、揺れなくてもすごく痛い・・・」
「そう、じゃ早いほうがいいわね・・」
ブ~ン。キュルキュルキュ~。
ぬおーっ!!! 」

私は左手でどこだか特定出来ないけどとにかく痛い左腰を押さえ、右手はいつの間にかボストンバックを離し、後部座席尻の下にある小さな四角形の座布団を握り締めていた。ウウ~ッ、
車中ふと足元を見て重大な失敗に気付いた。
ジャージ姿の足元が革靴なのだ。
しまった、あれほど慎重に準備したのに・・・、この革靴ですべてが台無しだ!
ジャージ姿の足元が革靴とはなんと間抜けなことか。
「革~靴~、履いて~・・」
「なに?川がどうしたの?」
もう、言葉が通じない。

ものの10分でO病院へ到着。
車中で連絡したので、玄関前には看護師達が待っている。
ドアが空き、ボストンバッグが取り上げられ、優しく左腕を支えてもらいながら車の外に立った。
見ると、今まで座っていた後部座席の座布団が握りしめられて、右端がしわくちゃになっている。

「大丈夫ですか?2回目ですよね。」
ベテラン呼ばわりされても、痛みで余裕のない私はちっとも嬉しくない。
玄関を抜け、鏡に写った自分をみて愕然とした。
ジャージ姿の私、上半身はナイキで下半身がアディダス・・・、
どうでもいいことなんだが、その上革靴とは・・・・、
看護師に両側から支えられながら、私は目を伏せうなだれた・・・、
どうでもいいことなんだが・・・

ベッドへ倒れ込んだ。
「点滴して!痛み止め打って!」
「は~い! 分かりました!」
えらく元気な声である。ところが、5分たっても、10分たってもやってこない。
勢いよくベッドになだれ込むように倒れたので、枕が足元!
『早く注射を!』と催促しようにも、ナースコールは遥か彼方の足元。
こんな時の足元ってすごく遠い。
顔をシーツに押しつけたまま、左目で入り口を伺いながら、じっと耐えていた。


痛み止めは3回ほど打ってもらった。
打つと意識がなくなり眠るのだが、1時間もするとまた痛みで目が覚める。

ようやく9時となり、OO泌尿器科へタクシーで移動。
看護師さんに腕を支えられ、OO泌尿器科の玄関につくと、またしても鏡に映った自分が・・・、
上半身がナイキで下半身がアディダスのジャージ、革靴履いて、今度は髪の毛が空に向かっておっ立ってる。 
見るからに病人じゃ! 

OO泌尿器科の院長は高校の後輩。
ちょっと前に一緒に飲みに行ったことも、

 ニカ~っと(笑顔)で「痛い? 

彼らには日常茶飯事の光景なのは分かってる。
痛みの激烈さもよ~く知ってるはずなんだけど、その軽々しいお言葉に・・・・、

と、私は反論もできず、一言  「うん!」
敵機「尿管結石」の来襲に立ち向かうはずが、早々に捕虜と化していた。
今なら我が軍の機密事項でもなんでもしゃべる!
暗号だって、秘密作戦だって話してしまう。
拷問に耐えるゴルゴ13だって尿管結石になれば、私のようになるはずだ。

超音波検査では結石はすでに膀胱のすぐ傍まで来てるようで、あともう少しで膀胱へ到達するのだと。
「あともう少しで、石は落ちてしまうけど、どうする?超音波で粉砕したら、石が砕けるから勝負は早いよ」って。
そりゃ受けるでしょ!

体外衝撃波超音波結石粉砕器のあるお部屋に案内された。
「はい、それではパンツ下げて、そこにうつ伏せになってください。
下腹部の所に穴が空いてますが、そこから超音波で治療しますから」
言われるがままにパンツ脱いで、うつ伏せになると、なるほど太ももの真ん中あたりからみぞおちあたりまで、ちょうどベットに穴が空いている。
ふと横を見ると、コントロールルームがガラスの向こうにあるのだが、そのガラスがマジックミラーになっていた。
そこに写る我が姿の惨めなこと・・・。
うつぶせのベットの穴から、我が愚息がだらんと引力に引き寄せられている。
『マジックミラーの向こうでみんな見てるんだ。あの部屋には看護師さんと技師さんたちが3~4人は・・・(悲)』
治療がはじまると、超音波装置なるものが上がってきて下腹部に接触。
石の位置を確認するのかグイーン、グイーンと動く。
すると、愚息がブラ~ン、ブラ~ンと・・・・悲・・、

確かに30分ほどで、結石は粉々になったのだろう。
ウソのように痛みがなくなった。

知り合いの院長は、にこにこしながら「大丈夫!完全に砕けたからもう心配ないっすよ!」

向こうはなんとも思ってないのだろうが、ブラ~ン、ブラ~ンをさらされた私は、なすがままのその姿に我が身の無力感を感じ、少なからずショックだった。


『あ~あ!ナイキの上着にアディダスのジャージ、革靴履いて、ブラ~ン、ブラ~ン。
完敗じゃ・・・』


迎えに着てくれた妻の車の後部座席で、つぶやいていました。
by moriken1103 | 2010-10-22 00:33 | 独り言 | Trackback | Comments(0)
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